阿蘇の草原で自然共生農業の新たな活動が始まっている!

熊本県阿蘇地域では、牧野組合や阿蘇グリーンストックなどの活動を基盤として、自然再生推進法の適用を受け2005年に阿蘇草原再生協議会が設立され、千年の歴史をもつ草原の生態系の劣化と景観の劣化という危機に瀕している阿蘇の草原を再生する構想を策定している。阿蘇草原再生協議会は、地元の34牧野組合、地元住民、専門家、企業、自治体など多様な実施主体が連携し、協働して阿蘇草原再生の目標を達成することを目的に組織化されている。目標は、「草原の恵みを持続的に生かせる仕組みを現代に合わせて創り出し、かけがえのない阿蘇の草原を未来に引き継ぐ」として、そのめざす姿を「暮らしに恵みをもたらす草原;地域の人々の生活と草原が密接に関わり、草原の恵みを持続的に享受出来る仕組みが動いている」と「人と生き物が共生する草原環境;盆花に象徴されるように、多様な動植物が育まれる豊かな草原環境が保たれている」の2つを描いている。分野別目標の中に「野草資源でうるおう農畜産業の再生」の分野が設定され、とくに「牧野利用と多様な形での維持管理の促進」がある。その取組の主体は牧野組合であり、環境省との協働で「野草地環境保全計画(牧野カルテ)」の策定が2006年から始まっている。牧野カルテの策定は、牧野内の主な植物分布、生息環境、過去からの存続状況、牧野内の地名、及びその由来、現在及び過去の牧野利用管理状況などについて組合員も参加して調査把握し、組合員の世代交代によって失われつつある牧野の情報を伝承していく機会となる意義が大きい。計画策定も含めて5カ年間かけて環境省で実施できる牧野管理省力化事業を実施し、実施過程とその後の生物多様性保全の効果を検証するモニタリング調査を行うことになっている。2009年度までに14牧野組合の牧野カルテが策定され、今後毎年3牧野組合を策定する方針である。

このような自然再生事業は、牧野組合が畜産生産手段としての採草放牧地の管理利用だけでなく、牧野の有する多面的機能を経済的に実現する経営体として成長し、いわば地域資源を活用して地域全体に利益をもたらす核となるいわば「地域利益経営体(会社)」へと変革していくシステムをつくることにもなる。

阿蘇草原再生協議会はこのような支援事業を強化するために、2010年3月に阿蘇草原再生募金を創設し、2013年までに1億円を一般市民、企業団体、観光客から募り、草原維持管理の人手不足を補う支援ボランティア派遣活動、牧野内の希少種、草原性動植物の生育保護活動、地元の小中学生などを対象とした草原環境学習活動など草原環境の保全再生に求められている緊急性の高い活動を支援することに目的がある。この募金運動で注目されるのは、牧野・草原を牧野組合の入会的利用の限界を越えて、牧野を「新たなコモンズ共有地」として幅広い市民と企業との共同事業によって管理利用していこうとする視点があることである。

詳細は、養賢堂月刊誌「畜産の研究」2011年10月号・11月号・12月号に『松木洋一「最近の牧野組合の入会的利用の動向と経営再建~「市民パートナーシップ入会権」論の検討~」』として連載されていますので、ご覧下さい。

Written by admin on 1月 11th, 2012