ツシマヤマネコとの自然共生農場が第11回田園自然共生活動コンクールで受賞

ツシマヤマネコとの自然共生農場が第11回田園自然共生活動コンクールで受賞

朝日新聞「ツシマヤマネコと共に」の記事に掲載した長崎県対馬市の農業者による自然共生農業の活動が2013年12月に第11回田園自然再生活動コンクール(地域環境資源センター主催農林水産省、環境省など後援)で受賞しました。田の浜集落での自然共生農場建設の基本計画を当協会の松木洋一理事長が検討委員会の代表となって策定して以来、現在もその活動に関係しています。今年は対馬へのツアーを企画したいと思います。
馬市北部の上島に位置する田ノ浜地区は、現在8戸の小さな集落であり、子供もいない程過疎化が進行した限界集落となっています。一方、当地区はツシマヤマネコの拠点生息地域でもあり、ツシマヤマネコ以外にも希少な野生動物が生息し、島内でも豊かな自然が残っています。減化学肥料・減農薬などの「自然環境にやさしい米づくり」に取り組むことで、ツシマヤマネコが生息できる豊かな自然環境を保全し、末永く後世に伝えることを目指しています。また、将来のツシマヤマネコの保護活動の担い手となる地域の児童を対象に、「田んぼの学校」を開催するなど、自然生態系保全に向けた取組が優れています

(田園自然再生活動コンクールの審査結果・受賞団体の概要http://www.acres.or.jp/Acres/denen/html/contest.htm

ツシマヤマネコとの自然共生農場が第11回田園自然共生活動コンクールで受賞

Written by admin on 1月 10th, 2014

東京電力福島第一原発事故下の避難指示区域には今でも900頭の牛が生きている!

被爆状況に置かれている、900頭ほどの牛が生きることを否定され、また同時に農業者の飼育行動とそれを支援する市民グループの活動が認められない地域社会が日本の中に存在している。人類の歴史の中でもかってない異常な空間をつくりだしただけでなく、まさに人間が対処すべき適切な思考と行動を放棄した結果である。
この事態は、日本人における「人間と動物との関係」についての社会的な価値観、すなわち「動物観」の中で放射能に汚染された家畜の生存価値の是非が問われている。
福島第一原子力発電所の放射能汚染事故によって、政府はまずは人間の生命と被爆からの健康管理のために「避難指示区域」を設定し、強制的に区域外へ移動させた。しかしながら、動物の生命保護と被爆からの救助は考慮されず、避難指示区域内に放置された。しかも、この人間向けの避難指示区域の線引きによる政府の諸規制がその後の家畜の生存を脅かす最大の障害となっている。

東京電力福島第一原発事故下の避難指示区域には今でも900頭の牛が生きている!
放射能線量の高低に係りなく原発から20km離れた距離で設定された警戒区域内へは、家畜の生命と健康を維持するために飼育しようとする農業者や支援市民などの立ち入りが2011年4月22日から禁止された。さらに5月12日には原子力災害対策本部長から警戒区域内の家畜の安楽死処分が指示された。それ以来、獣医師等の行政職員が動員され、2012年12月末までに1395頭が殺処分された。一方で、同じ避難指示区域である計画的避難区域では高線量の場所が多いにもかかわらず住民の立ち入り禁止措置はなく、家畜の移動もなされた。
このような政府の一貫性のない強行的政策にもかかわらず、2013年1月現在でも20km圏内には、牛の安楽死を拒否し、飼育行動を継続している家畜所有者の農業者と飼育作業の手助け、エサ供給、資金面などを支援する市民グループが存在する。

東京電力福島第一原発事故下の避難指示区域には今でも900頭の牛が生きている!

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飼育者は共通して「自分の牛を安楽死だけはさせたくない」理由で飼育しており、 放射能被曝牛であるからもはや牛肉生産・出荷の目的はもっていない。 しかし、畜産物でなくなっている牛の生存価値と新たな社会的役割・機能は何かを自問しながら飼育しているのである。通常の畜産業における「食べてしまう家畜を育てる人」から「食べられない家畜を育てる人」という人間と家畜の関係の変化をどう考えていくかの難題が発生しているのである。

東京電力福島第一原発事故下の避難指示区域には今でも900頭の牛が生きている!

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食肉用としての牛飼育から耕作放棄地の除草機能に活路を見出し、地域での「公益」としての評価を求める努力をつづける農業者・市民の活動が続いている。また、農林水産省および研究者グループ・日本獣医師会による「実験動物」化としての「公益」事業がすすめられ、安楽死拒否の農業者・市民活動の内部に混乱を与えつつある。
本来家畜は人間の食料として飼育され、最終的には屠畜され食べられてしまうことから、「物」(農畜産物)として扱われてきた。しかしながら、健康な家畜を育てることが食品の安全を実現するという消費者の認識とともに、動物福祉の運動が盛んな畜産先進国では20世紀末から家畜・動物観の大転換が進みつつある。すなわち、EUや世界動物保健機関OIE(旧称;国際獣疫事務局)は、家畜を「単なる農産物ではなく、感受性のある生命存在」として認識し、それ故その飼育過程においては家畜の生理的行動要求を満たしてストレスの少ない生活ができるようにアニマルウェルフェア飼育基準を科学的に開発し、普及しつつある。
このように世界的に家畜と人間の関係において価値観の転換がすすみ、いわば「畜産革命」が起こっている時代のなかで、福島原発事故による放射能被曝家畜の人道的な保護・飼育への検討課題が起きているのである。

以上のような福島県の被曝牛の現状を2013年3月には「ヒトと動物の関係学会」、6月には「共生社会システム学会」のシンポジュームで報告しましたが、このレポートは後者の発表レジメの部分要約です。その報告では次のような構成内容で行いました。後日、論文として公表する予定です。

1.東京電力第一原子力発電所事故による避難指示区域の設定と変更

2.避難指示区域の家畜の移動対策と実態

3.警戒区域における牛の飼育実態―安楽死の実行と安楽死拒否飼育者の現状

4.警戒区域における牛の「公益」をめぐる新たな問題の発生

5.警戒区域解除および避難指示区域の変更後における牛の人道的な保護の道

 

Written by admin on 8月 4th, 2013

日本で最も絶滅のおそれの高い哺乳動物ツシマヤマネコの保護と自然共生農業

ニッポンカワウソが2012年に絶滅種に指定されたため、ツシマヤマネコが日本でもっとも絶滅のおそれが高い絶滅危惧種ⅠA類の哺乳動物となりました。
ヤマネコは家庭猫よりひとまわり大きく、体重3~5キログラム、体長は50~60センチメートルで、トラ毛のヤマネコ「とらやま」と呼ばれているように、一見小さなトラの様相を持っています。かれらは、10万年以上前に朝鮮大陸とつながっていた時に南下し、1万年から2万年前に対馬が島として分断されて以来、生息するようになったといわれています。
1960年代までは、250頭~300頭が生息していたと推定されており、人々はヤマネコの肉を食べ、毛皮襟巻などとして利用されていました。
しかし、21世紀になってツシマヤマネコは100頭前後と危機的状態になってしまい、改めて保護と再生のシステムを開発していくかが問われています。

日本で最も絶滅のおそれの高い哺乳動物ツシマヤマネコの保護と自然共生農業

そこで2003年に農業者、ヤマネコ保護団体、大学の研究者、長崎県、町によって検討委員会が設置され(委員長松木洋一)、基本計画が策定されました。基本計画の柱は「農業者による自然共生農業システム」の開発であり、その方針にそって2009年に事業が完工されました。現在は農業者と大学研究者等が「ツシマヤマネコ共生村」の建設に取り組んでいます。
【詳細は別途専門誌に掲載予定ですが。朝日新聞大阪版夕刊の「生き物がたり」コラムに「ツシマヤマネコと共に」(2013年3月7日・14日.21日)として掲載されました。】

Written by admin on 4月 11th, 2013

21世紀の畜産革命―工場的畜産からアニマルウェルフェア畜産への転換

2012年7月1日、アメリカ合衆国カリフォルニア州政府が、世界三大珍味の一つであるフォアグラの生産及び店頭販売、レストランでの料理提供を禁止する法律を施行した(制定は2004年9月)。フォアグラは、ガチョウやカモを狭い場所に閉じ込めて運動できないようにした上に、蒸したトウモロコシを漏斗で強制的に詰め込む強制給餌を1日に3回繰り返し、一ヶ月間肥育させた脂肪肝である。その飼育方法が「残虐だ」とする動物愛護団体からの批判を受けてのことである。
米国ではこのような家畜の自由を閉じ込める工場的飼育方法の改革が全畜種で進んでおり、昨年7月には、全米鶏卵生産者組合(UEP:United Egg Producers)と動物愛護団体である全米人道協会 (HSUS:The Humane Society of United States)とが、今後15年~18年間において従来型ケージ飼育システムからエンリッチ飼育システム(飼育スペースを2倍増、止まり木・巣箱・砂遊び場の設置)への転換をはかる歴史的合意を結び、また両者が協力して州政府レベルの取り組みから連邦政府レベルでの法令化を目指すことになった。
また、ヨーロッパ連合EUでは鶏卵飼育バタリケージの使用が2012年1月から全面禁止されており(「採卵鶏保護基準指令」)、繁殖雌豚用のストールも最初の4週間以降は2013年1月1日から全面禁止される予定である(「豚の保護基準指令」)。子牛保護のために生後8週間を過ぎた子牛の個別のペン使用は2006年から禁止されている(「子牛の保護基準」指令)。

以上のように、ヨーロッパでは家畜福祉のための飼育基準の法令化が1990年前後から急速に進展し、EU統合の基本条約である1997年のアムステルダム条約には動物福祉に関する特別な法的拘束力を持つ議定書が盛り込まれ、そこでは「家畜は単なる農畜産物ではなく、感受性のある生命存在Sentient Beings」として定義された。この議定書が現在の家畜福祉政策の基礎理念となってEUの畜産革命といえるほどの政策転換が起きているといってよいだろう。

詳細は独立行政法人・農畜産業振興機構 『畜産の情報』 2012年10月号掲載
http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/index2.htm

Written by admin on 10月 13th, 2012

世界の農家の農業経営は大きく変わってきている!

論文紹介
「家族農業経営の企業形態の転換の論理と実態~日本と欧米諸国の比較分析~(上・下)」松木洋一著
養賢堂『農業および園芸』誌 2012年4月号・5月号掲載
http://www.yokendo.com/journal/jul.htm
英文版は『日本獣医生命科学大学研究報告』 第60号 79-98頁 平成23年12月掲載
http://jisvr02.nvlu.ac.jp/mylimedio/search/search-input.do

要 約
家族農業経営は日本のみならず世界的に支配的な農業企業形態である。しかしながら、この中核的な農業の担い手組織が20世紀後半から崩落的な減少を辿っており、農地の耕作放棄のみならず農村社会の崩壊の直接的な原因となっている。
家族経営では、従事者の高齢化と後継者不足の進行が強まっており、血縁や結婚縁による協業の維持がますます困難になっている。そのために家族員間の経済的及び法律的な契約関係について様々な改善がとりくまれ、従来の伝統的な農家概念とは異なる多様な企業形態の農場が形成されている。特に家族員間のパートナーシップ契約(共同経営契約)が結ばれることによって世帯主の家父長的な所有と管理から解放され、対等な共同経営者として妻や子が経営参加する経営組織が形成されてきているのである。また、所有と経営、労働が分離して、世帯主が社長でそれ以外の家族は労働者として雇用される会社組織も形成されている。
家族農業経営体の企業形態の転換を規定するのは家族の生産関係であるが、その形態転換を規定する内容には、経営手段の所有と利用関係、労働における雇用および管理と分業協業関係、利益の分配関係、資産の継承関係などがある。
企業形態 Type of Enterprise, Type of Business Organization, Business Formとは、経営体における所有・経営・協業労働の分化と結合の状態および発展段階によって類型化する経済的組織形態と各企業間の統合の状態をあらわす企業集中形態がある。また、個別の企業が設立や運営について法律によって規制されることによる法律的形態Legal Formとしての企業形態がある。経済的形態と法律的形態とは同一の企業の内実と形式の関係にある。農場の企業形態にはインテグレーションによる企業集中形態も重要であるが、ここでは個別の農場の経済的組織形態および法律的形態によって企業形態の類型的把握を行った。  

キーワード:家族農業経営、企業形態、個人経営、共同経営、会社経営

The Logic and State Concerning New Types of Business Organization
of Family Agricultural Holdings
– A Comparative Analysis between Japan and Western Countries-
Yoichi Matsuki
Emeritus Professor
Laboratory of Nature Management and AgriFood Economics
Nippon Veterinary and Life Science University
Tokyo, Japan

Abstract
Family agricultural holdings are the predominant type of agricultural holdings not only in Japan but also around the world. However, the “core principal farmers” have ever been drastically decreasing since the latter half of the 20th century, which directly caused not only the abandonment of arable land but also the collapse of rural communities.
In family holdings, the aging of workers engaging in agriculture and the shortage of successors have been aggravating, which have made to maintain the partnership based on family blood and marriage linkages more and more difficult. Under the circumstances, since various improvements in economic and legal aspects regarding the contract forms among family members have been undertaken, consequently various business types of agricultural holdings different from the traditional types have been formulated.
In this study, it is intended to locate the present situation and future direction of family agricultural holdings of Japan and western countries in the transforming process of business types caused by the structural change of family agriculture commonly observed in the world, in other word, the movement toward the partnership holdings and companies in juridical entities

Key Words: Family Agricultural Holdings, Types of Business Organization, Individual holdings, Partnership Holdings, Company Holdings

The Bulletin of The Nippon Veterinary and Life Science University,
No.60, 79-98, December, 2011
http://jisvr02.nvlu.ac.jp/mylimedio/search/search-input.do

Written by admin on 3月 6th, 2012