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楽農通信  No.58   no comments

ミズキの伐採

091402山のリンゴ畑の小屋の脇に、大人が両手でやっと抱えられるぐらいのミズキが立っている。どこかから飛んできて芽を出したもので、植えたものではない。

ミズキは成長が早く「早めに切らないと難儀なことになるなあ」と思いながらも、「薪にするにはもう少し太らせてから」などと迷っているうちに、切る時機を逸していた。

幹は直立して、1mぐらいの間隔で車状に4~5本の水平な横枝を出し階段状になる。

高さは、12~13mぐらいあるだろうか、横枝も5~6mぐらいに伸びて小屋の屋根にも掛かっている。

家主は弱るし、ミズキは太る。自分で切れるのは今年が最後のチャンスかと思い、伐採を決断した。

プロのように、木の上で両手を使ってチェーンソーを操る自信がなかったので、すべて片手で使えるノコギリ(手ノコ)で伐採する段取りを考えた。

091401前日、手ノコとチェーンソーの目立てを入念に行い、滑らないようにと新しい手袋と地下足袋を用意し、安全帯の点検をした。

一番問題なのは、腰痛持ちの家主の生身だ。

ハシゴをかけて一番下の枝に乗り移り、すぐ上の車状に出た横枝を1本切り、空いた隙間から一段高い横枝へと登る。それを繰り返し、手ノコで切れるぐらいの幹の太さの所まで登り詰め、幹の先端を切り落とす。考えてみればミズキは木登り伐採の入門にふさわしい木だ。後は足場にしてきた枝を落としながら下りていく。切られた枝は下枝に引っかかってから落ちるので穏やかに落ちていく。横枝を全部払い終わり、地面に降り立ち一休み。ここまでは作戦どおりにうまくいった。

後は、小屋とリンゴの木の間の2mぐらいの空地にうまく切り倒すことだ。

ミズキのなるべく高い所にロープを結びつける。

チェーンソーを取り出し、倒す方向に受け口を作り、追い口を切っていく。

刃が木の重みで挟まれないように、切り口にクサビを打ち込み、慎重に切り進む。

最後は2~3㎝幅の切り残した部分(つる)と、クサビで木を支えている状態になる。

後は、私がくさびを打ち込んで徐々に倒していき、倒れ始めたら上さんがロープを引いて誘導するという手はずだ。

私が、クサビの打ち込みに難航しているうちに、上さんがロープを軽く引いたらミシミシといってミズキが倒れ始めた。下敷きにならないようにと上さんが横に逃げたが突然姿が消えた。足を踏み外して土手から転げ落ちたのだ。しばらくしてロープを伝ってはい上がってきた上さんは、誇らしげに一言。「うまく倒したでしょう」

お互い、近年にない緊張と達成感のある仕事だった。

次の日、かつて経験のない人生最大の全身の筋肉痛を体験することとなり、上さんの顔の2か所に黒いアザが現れた。その後、夫婦げんかではないと釈明するのに伐採の一部始終を何回も話す羽目になった。

後日、倒したミズキを玉切りし、割って、積み上げたら、半月分ぐらいの(まき)ができ上がった。冬になってミズキの(まき)を見る度に、この日のことを思い出すに違いない。

燃料の自給にはけっこう *ずく(・・)と体力がいる。

*ずく:長野の方言で、やる気、根性、気力、持久力などに似ているが、表現するに適当な言葉が

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Written by support on 9月 14th, 2016